朝の風 夜の香り エロパンマン

◎ エッセイ

 

○ パン屋経営者・パン職人(人) 04/16/2017

朝の風 夜の香り

 

当時、僕が働いていたパン屋は早番(3時)中番(4時)遅番(5時)に分かれていました。
ある日から、初めて早番を担当することになり、
朝、2時半に家を出ることになりましたが、夏の季節は良かった。
目覚めると冷たい空気が心地良く、バイクを飛ばすと朝の風は朗らかです。
店に到着すると、仕込み担当の店長が先にテキパキと仕事を先に始めていました。
僕がはじめての早番ということで、いつもより早めに来て、
段取りを教えてくれる時間を作っていてくれたのです。
僕の仕事は特に難しいということはなく、今日1日をスムーズに進めるための下準備でした。
店長は朝の仕事にふさわしく、さわやかな人です。
実力も人望もあり、朝早く2人で仕事をしていても苦になりません。
店長の期待に答えられるように早く仕事を覚えなければ、とがんばりました。
いつもより早めに起きる朝は慣れるまで、つらかったけれど、
店に到着するまでのバイクで横切る風は、店長と同じくさわやかでやる気を起こさせました。

しばらくした日。
店長から濃厚な香りがするのです。何の匂いだろう?
まさか香水、オーデコロン?うむ……。
パン職人に香水など匂いをつけてくる人はいません。不思議です。
この香りは1週間に2、3回ほど、店長からしてきます。
訊ねることはできませんでした。香水と違うにしても店長に文句を言うみたいで。

あるとき、休日の前日に職場のスタッフが参加する親睦会で、
僕も参加して居酒屋に行くことになりました。
みんなで雑談やパンの話になり、落ち着いたところで、
隣のワニの先輩に不思議に思っていた謎の香りのことを聞いてみました。
「あぁ、わかった? あれなぁ、夜の匂いや、店長は新婚やからなぁ」
先輩はニヤニヤしながら、手元にあったビールを口元に向け、ゴクっと飲みました。
生々しく、僕も手元にあったビールをゴクっと飲みました。
少し離れた位置に座っていた店長が席を立ち、公衆電話に向かいました。
「自分の匂いは、自分でなかなか、わからへんからなぁ。
俺はすぐに気付いたけど、店長に『終わったあとはシャワーでもした方がいいですよ、
夜の香りがしています』ってよう言わんしなぁ」 ガハハ。

先輩は豪快に笑います。そのうち、居酒屋の扉がガラっと開いて、
女の人が入り、「いつもお世話になっています」こちらの団体に向かって挨拶をしました。
店長の奥様でした。店長はお酒に弱く、車で迎えに来てもらっていたのです。
僕も隣の先輩に連れられて、お開きになった居酒屋をフラフラと出ました。

その日から休日開けの日、僕は寝坊をしました。
家を出る前に連絡の電話をして、急いでバイクで店に向かいました。
店に入ると、「あのなぁ、休み開けは遅刻しやすい。気を付けろよ。
遊んでもいいけど、そんなときこそ、夜はしっかり早めに寝るもんや」
店長は諭すように言いました。濃厚で妖艶な夜の香りを漂わせながら……。

僕は生まれてはじめて、めまいを感じました。
居酒屋でお会いした店長の奥様は、僕のタイプの美人だったのです。
めまいと共に、「店長を越えてみせる」と心に誓ったのでした。

 

○ パン屋経営者・パン職人(人) 04/16/2017

エロパンマン

 

僕がその職場で働くことになって、職場の人を順番に紹介されたとき、
ある人物のところで、あっ!となった。「アンパンマン」にそっくりだ。
男、35歳、独身。昔からよく似ていて友達から「アンパンマン」とあだ名され、
就職のときも、みんなから「パン屋に就職したら?」となり、その通り、パン屋に就職したようです。
パン屋で働こうとする人は、それぞれ理由があるけど、アンパンマンに似ているからは少ないと思う。

僕がはじめて成形をしたとき、アンパンマン先輩のお世話になった。
成形の中でも、生地の丸めは基本です。
丸めは、生地を包み込むようにして手を動かし、生地を傷めないようにして表面はツヤを出す。
簡単な成形であるが、はじめてとなるとなかなかうまくいかない。
そんなとき、アンパンマン先輩は、
「あかんなぁ、丸めのコツは女性の胸を揉むようにすることや。こうやって、こうやって。
そうか。経験が不足してるのか。しゃーないな」
丸めの成形であと大事なのは、底(お尻)を閉めて、腰高にすること。
「あかん、お尻はしっかり閉めろ。こうやって、こうやって」
自らお尻を閉めて、腰を前後に揺らしている。

聞いた話によると、アンパンマン先輩は新人を教えるとき、毎回こうしているらしい。
この2つは、必ず出てきて必笑のギャグだと思っている。
下ネタは最大のコミュニケーションとして信じて疑っていないようだ。
仕事中、ゆっくり話をしている時間はないのですが、余裕があるとき、雑談をすることはあります。
そんなとき、何かとエロい話をするのがアンパンマン先輩です。
アンパンマン先輩は、「エロパンマン」とも言われていました。もちろん本人のいない所でですが。

ある日のこと、販売員の女性が新人として入ってきました。
新婚、数ヶ月ですごい美人なのです。明るく笑顔もあり、すぐにみんなの人気者になりました。
アンパンマン先輩もすぐにお気に入りになりましたが、
パン職人と販売員。店長でもないと数名でたまに話をする程度です。
その職場では、昼休みがローテーションで、そのとき絶好の機会が訪れました。
休憩場でアンパンマン先輩がくつろいでいるとき、美人販売員の入社時間と重なったのです。
時間に余裕をもって会社に来ていたので、少しは話ができます。

アンパンマン先輩が休憩場から戻ってきたとき、満面の笑みを浮かべています。
「○○さんと、二人きりで話できたわ!」 開口一番です。
そのとき、美人販売員も入って来て、タイムカードを押し、レジ前に入りました。
大きな声で「さっき、聞いてんけどな、○○さん、昨日Hしてんて!!」
背中越しの美人販売員は、肩が振るえ出しました。
「旦那さん、ええなぁ、羨ましいなぁ」 宝箱を手に入れて、箱を開けたように続きます。
美人販売員は、手で顔を覆い、号泣になってしまいました。
どうやって、そうなことを聞き出したのか今でも不思議です。(実話ですので)
悪気はないのですが、悪気がないのが悪質なのです。
その場は店長がなんとかなだめました。

その話が社長に伝わったとき、アンパンマン先輩は即刻、遠くの支店に飛ばされました。
美人販売員は、お客様にも大人気で、男性客が段々と増えていたのです。
それなのにアンパンマン先輩せいで、辞めてもらっては困ります。
当時、「セクハラ」という言葉はなかった。
後に世間で、セクハラ問題が話題になったとき、僕は真っ先にエロパンマン先輩を思い浮かべました。

 

 

 

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