職人の在り方 パン職人が別のパン屋へ

◎ エッセイ

 

○ パン屋経営者・パン職人 07/02/2017

職人の在り方

 

菓子の本を読んでいて、職人の在り方についての記事がありました。
内容を抜粋した上で加筆修正します。
著者が社長で、作業場での出来事です。

「ある時、ロールケーキがすぐ売れ切れるものだから、
A君にロールケーキをもっと作るように指示したところ、
A君が言うにはロールの他にまだ作らなければいけない商品があり、
だから作れませんとの返事。
その商品はあまり売れなく、おそらく売れ残る商品であり、
ロールはお客様が必要としていて、置いていれば絶対に売れる商品です。
私は強い口調でロールを優先して作りなさい、と命令口調で発すると、
『社長、わたしはロールを作る為に職人になったのではありません』
その言葉は職人として間違っています。
しかし、忙しくて手が回らない状況だったことも事実です。
(中略)私とA君と話し合った結果、意見が合わず結局、辞めていきました」
「ロールケーキはスポンジ生地にクリームを巻いて、カットしたものですが、
難易度は高くなく、スポンジ生地とクリームさえあれば、
腕の立つパートさんでこなしていける仕事です」

私の知る限り、職人が社長にここまで反抗的で言い返したのは一人もいなかった。
社長はパティシエではありません。そこでナメられた部分があるのか。
いや、そうでなくても社長の指示は絶対であり、反抗するものではない。
理由は何であれ、社長の指示をこなしていくのが職人の姿です。

もし、不安や不満があり相談するなら、先輩>店長>社長の順です。
話すタイミングは、仕事が終わったあとにすれば良い。
仕事中の拒否はもってのほかです。
職場で不安や不満は誰しも少なからずあるもの。
はっきりいって、不安や不満は実力不足の人が言うことが多い。
周りに認められていない。
実力があって、周りに認められていれば、それとなく話すことが理解されて、
不安や不満は解消されていくものです。

>『社長、わたしはロールを作る為に職人になったのではありません』
ロールを作る仕事が永遠に続くと思ったのだろうか。
若手職人に思いがちですが、それはないと断言します。
ロールを完璧にこなし続けていれば、
次は高度な仕事に移ってもらおうと思うのが社長の心情です。

注意として、同じ仕事を何年も続けると初めから宣告されることがあります。
窯担当なら3年続けるとか。ベテランならともかく若手にそれはどうかと思う。
パン職人は特に覚えるべき技術がすごく多い。
3年も同じことを繰り返すなら、一定期間で別の仕事を覚えた方が良い。
窯をマスターした時点で、それとなく先輩などに相談することをお勧めします。

A君はロールを作り続けろではなく、足りない分をもっと作れと言われている。
もし、A君にもっと実力があれば、
「A君ほどの実力者がロールを作っている時間はもったいない」と思われ、
ロールを作る時間は減っていくはず。
A君はロールを作る不満より先に腕を上げる時期だったのだ。
職人は腕がなければ、何を言われても仕方がない部分はあります。
とにかく、職人は腕を上げることに精進することです。
技術で「腕がある」のは、自分で決めることではない。
「周りの人たちに認められる」ということです。

職人は、会社(社長)に不安や不満は少なからず、あるかもしれない。
会社(社長)の考え方がおかしい。ということもある。
辞めるたいと思うときもあります。
そう思うにしろ、「職人は腕がなければ価値がない」を自覚するべきです。
腕がないのに店を変わっても同じことの繰り返しです。
もちろん、相性ということはありますが、相性だけでやっていけるわけもない。
職人は、とにかく技術を磨く。人に文句を言わせないほどの技術を持ってほしい。
もうひとつ、重要なことは人間性。
人間性がなければ、技術があっても宝の持ち腐れとなります。

 

○ パン屋経営者・パン職人 07/02/2017

パン職人が別のパン屋へ

 

たくさん経験を積んだベテランのパン職人でも、
新しいパン屋に移ると、初めの一週間はほとんど何もできません。
できることは技術的なことだけです。
新たなパンの作り方、段取りを覚えるだけで必死です。
数週間して、ようやく馴染んできて、本来の力を発揮することができます。

そのあいだに 「こうした方が良いのではないか?」と、思えることはあります。
それに関して、絶対に口に出してはいけません。
前の店の方法を持ち出して、「前の店はこうだった」そうなのは通用しません。
例外は、役職待遇で助言を求められている場合だけです。
口に出すと、間違いなく嫌われます。問題児とされます。
新しいパン屋に移って持ってくるのは、正確な技術だけです。

新しい店のパンの作り方、段取りは、
一見、おかしいと思えても、経験に基づいた合理的かつ柔軟に対応されたものです。
全体の大きな目で見ると、その店にとってのベストです。
「郷に入っては郷に従え」その環境に適応するのが職人のなせる技です。

意見が言えるのは、助言を求められたときか、
周りから認められて新しい店のことを充分理解したうえで初めて指摘できます。

「前の店はこうだった」
揉める理由の第1位です。
負けるのは必ず、言った人です。言うだけ無駄どころか、マイナスなだけ。

「故意に勝手なことをする」
その人にとって良いことだと解釈しても、ひとりだけ違うことをしては迷惑なだけでしかない。
もし、それが良いパンになるとしてもです。変更するなら、上の人に相談するべきです。

「製菓学校ではこう習ってきました」
これもうんざりさせられます。
学校とパン屋は違うんじゃ、ボケ! の一言で終わりですが後が絶えません。

上記の3つは、昔からずっと続いています。
ありがちですが絶対にしてはならないことです

 

 

 

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