がんばる理由 後輩の潰し方

◎ エッセイ

 

○ パン屋経営者・パン職人 04/17/2017

がんばる理由

 

仕事の終わりに、一歳年上の先輩が、「俺、もう辞めるわ」と告白した。
近頃、元気がなくどうしたのかな、と思っていた矢先のこと。
お父さんが病気で倒れて、入院していたらしい。
退職の理由は、見通しが悪く、家計を支えることになったからです。

今の安い給料ではやっていけない。
当時のバブル経済は、職人見習いに不遇でした。
給料は、2倍近くもらえる会社はたくさんありました。
それでもパン職人を選んだのは、パン作りが好きだったから。
「充実した仕事ができれば、給料が少なくても構わない」
いぜん居酒屋でそう話していた。皮肉なものだ。現実は厳しい。

有望な新人が入社してきた。気合充分。センスが良い。性格は素直で飲み込みが早い。
その新人はカレーパンを揚げていた。日によって手をパンパンに赤く腫らす。
病院で検査してみると、油に弱い体質が判明した。
体調や疲れによって、生地に触っていても異変が起こるときがある。
とてもじゃないがパン屋では働けない。あえなく退社しました。

パン職人を目指してがんばろーと思っていても、働けない人もいる。
残念だ。自分はどうだろう。幸いにも丈夫な体と働ける環境がある。
それでがんばらないでどうする。
苦しいとき悲しいときこそ思い出す、あのときの先輩と後輩。

 

○ パン屋経営者・パン職人 04/17/2017

後輩の潰し方

 

パン屋で働いているパン職人向けです。
憎たらしい後輩は、いませんか?
……いますか。その後輩の潰し方を教えましょう。

[はじめに]
学校内であるような、露骨で残虐な、いじめではなく、
ましてや、暴力や汚い言葉で罵ることではありません。
挨拶をしないとか、口をまったくきかないとかでもありません。
それは、あなた自身が問題となってきます。
そういうことではありません。
周りの人たちに、わからないように行うのです。
では、始めましょう。

[手口]
包あん技術をしている現場です。
基本的なことは、最低限、教えます。
(右利きなら)
1、左手でヘラを持ち、餡をすくう。
2、右手で、生地を持つ。
3、決められた量の餡を生地に入れる。

後輩の包あん技術が未熟なら、遅い。ガスの抜けが不十分。あんが偏って入っている。
包餡した生地が不格好。決められた量の餡が入っていない。なにか問題はあるはずです。
すぐさま、事あるごとに理不尽に指摘して怒ります。
そこは大声を出さないようにします。
大声だと周りに感情的になっていると思われるからです。
あくまでも紳士的にです。

後輩が包あん技術のコツを教えてほしいと乞うてきた場合は、
「技術は、目で見て盗め」
この一点張りでOKでしょう。
わかりにくいコツや、隠しテクニックはあるけど、教えません。
それでも、その後輩が負けず嫌いでがんばって、
包あん技術を上達してきたとしましょう。

ここは、「必殺の後輩潰し」です。
決められた量のあんを生地に安定して入れるのは、難しいことです。
後輩が包あんしたら、定期的に生地を秤にかけて、
少ないときは多い。多いときは少ない。
と、頻繁に指摘しましょう。必ずや不安定になって、
包あんした生地の重みを手で持つ感覚は、身につかないでしょう。

以上です。
それでも、後輩ががんばって自分を追い越しそうだ?
それはもう、あなたががんばるしかないとしか言いようがないです。

[最後に]
おわかりいただいている、と思いますが、
メーセージは逆です。
「後輩は、潰さないでほしい」ということです。
後輩の良くないところを指摘するのは、悪いことではありません。
ただ、理不尽に頻繁に指摘して怒るというのは、どうかと思うのです。
成長には時間がかかります。温かい目が必要です。
後輩が教えてほしい、と言ってきたら、場所を考えて時間の許す限り、
なんでも教えて良いと思うのです。

「必殺の後輩潰し」は、そのつもりはなくても、
そうしている人は多いと思いますが、間違いです。
その教え方では、手の感覚が身につきません。
正しくは、あんの量が多くても少なくても一言、
「決められた量のあんを正しく包め」だけで良いのです。
適度な量の感覚を身に付けるには、その意識付けです。
あんが多い少ないと言うと、どうしても多い少ないの意識が先走り、
正しい量の感覚がわからなくなるのです。
これは、包あん技術に限らず、スケッパーによる分割技術や焼成技術にも言えることです。
先輩は、後輩を正しく指導することを願います。

パン業界の未来を背負って立つ後輩は、大事ですよ。
また、「情けは人の為ならず」です。

 

 

 

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