ミキサー 分割機

◎ パンの知識

 

○ パンの機械・道具 2017年6月2日  改訂 2019年5月23日

ミキサー (業務用)

 

 

 ミキサーは、生地やフィリングをを作る機械です。
パン屋で生地を作るときは、縦型ミキサーがよく使われます。(写真で業務用)
材料を入れるボールがあり、上部にアームと呼ばれる棒が付いていて、これが回転して、材料を混捏(ミキシング)します。(ミキサーは他に、スパイラルミキサー、横型ミキサーなどの種類もあり、これらは後述します)

 縦型ミキサーのアームは、取り外し可能で、目的に合ったものを使います。以下の種類があります。


1)フック 生地を捏ねる力が強く、パン生地作り用
2)ビーター 生地を混ぜる力が強く、クッキー生地、ビス生地用
3)ホイッパー 材料に空気を含ませて、泡立てる(たてる)ことができます。

フックの回転速度による生地の違い
フックがパン生地作りに適しているのは、高速に回して、生地のグルテン組織形成を引き出すことができるためです。フックの形状が生地をミキサーの側面にぶつけて、グルテン組織を作っているのです。(グルテンの形成という)
〇速度があるほど、生地を捏ねる力が強く、よりグルテン組織を強固にする。
〇速度があるほど、生地温度が上がりやすい。摩擦熱で冬場は長所、夏場は欠点となる。
○速度があるほど、生地の傷みが出やすい。ミキサーの音が大きくなる。(ミキサーの仕様にもよる)
遅いほど、上記の逆ということになります。

[フックの回転速度による役割]
ミキサーのアームは、速度を調節することができます。L(低速)、M(中速)、ML(中高速)、H(高速)、HH(最高速)で、ミキサーによって、2~4つあり、速度によって、役割は変わります。
◯低速は、材料を混ぜる(材料の均一化)
◯高速は、生地を捏ねる(グルテン組織の形成)
◯中速は、そのあいだ
◯最高速は、アームの回転が早すぎて、生地を傷めるので、ほとんど使われません。(メレンゲ、たてるクリーム作り用です)

 ミキシングの最初期の低速は、材料を混ぜる意味合いが強い。初めから高速で回すと、材料がミキサーから飛び散っちゃいますからね。生地によって、低速を長めにすることがありますが、あとの高速を短めにしている兼ね合いの意味があります。高速に回して、グルテン組織の形成は、パン生地作りの肝心要で重要なところです。
つまり、上記の回転速度による違いで、パン生地の種類、性質などや事情によって、低速、中速、高速の時間が変わってきます。
あれ、事情って何ですか? となりますが、ここから先はミキシングの話になってきますので、「仕込みの基本」を参照に。

[ミキサーによるミキシングの違い]
ミキサー(特にメーカー)による違いによって、回転速度が違うので、レシピにあるミキシング時間そのままで作っても、思うようにはいかないことがあります。そこは生地の具合を見て微調節が必要です。微調整は難しいですが、パンの出来栄えによっても、次回のミキシング時間を活かすことになります。

フックによるミキシングの違い
パン屋で使うミキサーのフックは、メーカーによって多少の違いはあります。直線ような鋭角、横に膨らんだようなものがありますが、微調整で済む範囲です。ただ、ドラゴンフックにようにかなり特殊なものがあります。これはあるメーカー特許済みで、少量での仕込みが可能、生地が傷みにくい、ミキシング時間が通常より短くなるといった利点があります。まぁ、特許済みとあって高額なんですよね。パン屋で必ず、使っているわけではありません。

 上記のように、ミキサーやフックの違いによって、ミキシング時間は変わってきますが、パン屋以外で使わない特殊なミキサーのスパイラルミキサーは、フックの形状がだいぶ違うので、ミキシング時間は縦型ミキサーと比べると少し変わります。フックだけでなく、ミキサー本垰が横に回転するという特殊な構造なので、変わるといえば当然なんですけどね。ちなみにアーム(フック)の取り外しはできません。横型ミキサーなんてものは、そもそもフックではないんですよ。これも縦型ミキサーと構造がだいぶ違うのでそうなります。

 スパイラルミキサーは生地が傷みにくく、縦型ミキサーよりミキシング時間が短くなってハード系に向いている。横型ミキサーは20~25kg仕込みのような大仕込み可能で中堅、大手の会社向きというミキサーです。

ミキサーと仕込み量による違い
縦ミキサーの大きさ(容量)の単位は、コートとなっています。例えば、60コートだと、最大12kg仕込みまで可能で、最小2kgとなっています。最も適した量は、10kg仕込みです。これより、少なく多くても仕込み時間は長くなる傾向にあります。少ないと生地がミキサーの側面に当たりにくく、グルテン形成が遅れ、多くても叩きつける効果が薄れるからで、どちらにしても材料に対するアームのかかりが悪くなるのです。仕込み量に適したミキサーの大きさが望ましい。そうは言っても、60コートの場合、2kg、12kgのような極端な仕込み量でなければ、変わらない、または微調整ですみます。

 コートは、撹拌量の意味です。発音で正確にいうと「クォート」ですが、「コート」と言うことも多いのです。

 業務用のミキサーに関していえば、窯のようにメーカーに違いによる、あーだ、こーだという話は、ほとんどありません。性能や機能、クセによる差が少ないからです。

 

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ミキサー (家庭用)

 

 家でパンを作る場合、機械を使うと、ミキサーは次の3タイプになります。(フードプロセッサーや餅つき機などでも可能でしょうけど、今回の考察からは対象外にしています)
卓上ミキサー(スタンドミキサー)
ホームベーカリー
ニーダー

 卓上ミキサーは、業務用の縦型ミキサーを小さくしたようなものです。
性能は、業務用と違って、各機種によって大きな違いがあります。使いやすさ、パワー(撹拌能力)、安全装置の有無、手入れのしやすさなどです。
機種によっては、「パン生地は不可」のものがあり、モーターが焼き付く恐れがあるからです。本来、料理やドリンクに使う機械で、パン生地作りは、それだけパワーが必要なのです。可能であれば、(パン屋の)業務用ミキサーのような生地ができます。半面、ミキサーは高額になり、音の大きさ、消費電力(電気代が高くなる)などの考慮がより必要になります。
パン作りでいうと、生地作りだけに特化しているので、それ以上のことはできません。

 ホームベーカリーとニーダーも各機種によって大きな違いがありますので、以下は大まかな特徴です。

 ホームベーカリーは、生地作り、発酵、焼成をすべてすることができ、しかも、自動、半自動と選択できます。便利ですが、ミキサー、発酵機(ホイロ)、オーブンの3つの機能を同じ機械でするとなると、物理的に無理が生じてきます。

 生地作りのミキシング能力でいうと、パワー不足です。フックは、下部にある羽根(プロペラ)のような形で小さい。これでは攪拌能力が劣ります。フックを大きくすれば、上がりますが、その分モーターに負担がかかって焼き付く恐れがあります。それに焼成が可能なので、出来上がったパンからフックを取るとき、それだけ大きな穴が空いてしまう事情もあります。

 ニーダーは、「捏ね機」という意味です。パン作りのニーダーは、パンニーダーと言って、家庭用パン生地作りの機械ということになります。卓上ミキサーのパワー(攪拌能力)にホームベーカリーのようにパン生地作りに合わせた色々な機能を持ち合わせています。ただ、発酵機(ホイロ)、オーブンを別途用意することになります。

 ホームベーカリーはパン作りの機械的要素3つをすべて兼ね揃えているのに、生地を作るだけのニーダーがなぜ、同額かそれ以上の価格なのか? と思われるかもしれませんが、やはりパワー(攪拌能力)の違いでしょう。一度の仕込み量も多くできます。

 パン屋で使用される業務用のミキサーの電力は、動力で動かしており、電力ではありません。そりゃ、パワーがあります。もっとも、10kg仕込みなどと大きな仕込み量なので、そうなります。家庭用の仕込み量の数100g程度なら、電力で十分です。

 それでも、検索で調べてみる限り、グルテン組織の形成不充分は、なりがちです。捏ねると混ぜるの違いで、混ぜ合わせるだけでは形成でなかなかの時間がかかります。特にホームベーカリーのパン生地は捏ね不足で、工夫といえば、全自動で作るのではなく、生地作りで途中から生地を取り出し、手で捏ねてグルテン組織を強化する方法があります。

 家でパンを作る場合、パン屋で作るパンの配合との比較で、イースト量が多いのは、そのためなんです。イースト量で、不充分なグルテン組織形成を補うという。

 イースト量を多くして、何が悪いのか? イースト臭がしやすいのが最大の欠点です。また、初期段階の発酵が強く、発酵コントロールがしにくくなり、パンの出来不出来にバラツキが出やすい。ということがあります。

 手捏ねのことを少し述べておくと、生地状態を把握することができて、力加減で適切なミキシングができる。生地状態で水分量の増量が可能といった利点があります。手捏ねは力が要るので疲れますが、ホームベーカリーを使用していると、必要になることがあります。

 ホームベーカリー、ニーダーは、よく性能などのうんぬんの話になりますが、性能そのものを知り、使いこなす方が大事でありまして、経験値を上げて、自分自身がレベルアップすることを目指しましょう。

 

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分割機

 

 分割機( ディバイダー、ラウンダー)は、パン生地を自動で分割、丸めをする機械です。(セミオートタイプとフルオートタイプがあります)
分割範囲は、40~80gで、30個分割します。(一般タイプであり、機種によって変わります)

 以下は、30個固定の例です。
◯1200kg生地玉→40gを30個
◯1500kg生地玉→50gを30個
◯1800kg生地玉→60gを30個

 発酵した生地玉をプレートに乗せ、機械内部に入れてスイッチオンで作動します。分割は機械内部で押しつぶすように一瞬です。(フルオートタイプ )
丸めは内部で回り、0~30秒まで設定できます。(通常は8~15秒)

 分割機を使うのは、大量生産するためで時間短縮になりますが、いくつかの欠点はあります。
○機械を使うと手とは違い、微妙な手加減ができないので、生地が傷みやすい。
○分割量にブレがある。(生地量が多すぎる、少なすぎる、過発酵、発酵不足、生地が硬過ぎ、柔らか過ぎで特にそうなります)
○丸めは表面の適度な張りがない。(表面を丸めただけなので、きちんとしたいなら、改めて手で丸め直すしかない)
○傷みやすい生地(ハード系など)には使えない。
◯硬め、柔らかめの生地には使えない。
○食パン生地は、グラム量が大きいので使えない。
◯丸めた生地の中心に縦の空洞ができるときがある。(成形で薄皮の原因となる)
○購入資金が必要。置き場所の確保がいる。毎日の掃除が必要になる。

 デメリットが多く、気になるところですが、それでも、メリットの「分割、丸めが自動で速い」の作業性アップは優秀です。
全ての個人のパン屋にあるわけではありませんが、時間短縮や過発酵しやすい夏場に特に良いです。

 

 

 

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